• オーストラリア・ブリスベンに渡ってから5年。最近は永住権も取りました。

    有路 新太朗さん

    職種:
    寿司セカンドシェフ
    勤務地:
    オーストラリア
    経歴: 10年間のバンド活動中にメンバーとともにカルフォルニアへ渡米。27歳の頃にバンドを辞め、寿司職人として海外で働くことを決意。東京すしアカデミーで1年間寿司職人養成コースを受講し、2012年よりオーストラリア・ブリスベンにて寿司シェフとして活躍中。

    有路 新太朗さんの活躍についてお話を伺いました。

    オーストラリア・ブリスベン

    ■人口 230万人(名古屋市と同規模)
    ■公用語 英語
    ☞シドニー、メルボンに続くオーストラリア第三の都市
    ☞「サンシャイン・ステート(太陽の州)」とも呼ばれ、年間を通じて晴れた気持ちの良い青空が広がる
    ☞車で1時間の距離にビーチもあり、シティライフとビーチライフの両方が楽しめるのが魅力
    ━━━寿司シェフを目指した経緯は?
    元々アメリカのカリフォルニアでバンド活動をしていました。バンドを辞めると決めたのが2009~2010年あたり。じゃあバンドを辞めて何をしようか思って、でも海外に行きたいなと思っていた。海外に行きやすい仕事はないかなと考えて寿司職人に決めました。


    その理由は、アメリカにいたときに少しアルバイトで日本料理店を手伝った経験もあって、寿司ロールの巻き方だけは知っていたからです。バンド活動中、ツアーでお世話になった人に寿司を作ったりしていたんです。そしたら凄く喜ばれて、「こんな僕のお寿司でもこんなに喜んでくれるんだ」と音楽以外でも自己表現できる方法があるのかなと少し感じたのがきっかけです。あとは、僕の中で寿司のカウンターはステージのようなかっこいいイメージがあった。自分の得意なことをやって目の前のお客さんを喜ばせて…それは自分がステージ立っていた時と同じだったので、そういう憧れを元に選びました。
    ━━━なぜ東京すしアカデミーに入学したのですか?
    最初から名店とかで修行するのは10年かかるくらいの厳しいイメージがありました。当時僕はもう27歳だったので、技術を早く習得したいなと思って、バンドを辞める最後の年は1年間寿司居酒屋で働きました。ここだけで学ぶよりさらにちゃんと技術を学びたいと思って、東京すしアカデミーという情報を知って見学をして入学に至りました。


    東京すしアカデミーで学んだ技術は今でも凄く生かされています。中でも、ストップウォッチでタイムを計りながらひたすら握りの練習をしたのは本当に良い経験になりました。たまに今でも自分の職場で一貫を何秒で握れるか練習したりしています。
    ━━━オーストラリアに滞在することになった経緯は?
    カルフォルニアの町や気候、人が凄く好きで本当はカルフォルニアに戻りたかったんです。でも、アメリカはビザを取るのが難しかった。それと比べてオーストラリアは当時アメリカと比べてビザを取りやすかった上に、カルフォルニアの気候にも似ていて過ごしやすそうだった。カルフォルニアの気候に似たところを選べばもしかしたら似ている雰囲気なんじゃないかなという漠然としたイメージを持ってブリスベンに行ったのがきっかけです。
    ━━━オーストラリアはどんな国ですか?
    ご存知の通りコアラやカンガルーの国ですよね。沖縄と北緯と南緯は全く逆ですが、大体同じくらいのところに位置していて気候も同じく亜熱帯気候なんです。沖縄とまったく同じ生物がブリスベンにも生えたりしていて。ちょっと黄河に出れば野生のカンガルーがぴょんぴょん跳ねていて。趣味でコアラ探しなんてこともします。休みの日に公園とか行って。鳥も住宅街・黄河問わずカラフルな鳥がたくさんいます。自然が豊かな国です。


    でも自然が豊かなのは国土の20%くらいで残りの8割は沙漠なんです。大きさ的にもほぼアメリカと同じ、人口も東京の半分以下(2000万人以下)。小さな国です。


    文化面では日本とアメリカほど違いはないですね。オーストラリア人はとても礼儀正しいし常識を守らない人が凄く嫌いな人が多いです。町はどこに行っても綺麗だし、日本と比べて感覚はそんなに変わらないと思います。アメリカは「フレンドリー!」というイメージが強いですが、オーストラリアはイギリスの影響がとても強いのでイギリスに皆憧れを持っていてイギリスの洗練された感じがオーストラリアにも受け継がれています。ですが、同時に国が広大で気候も暖かいのでもう少しオープンな感じもありますね。
    ━━━オーストラリアで働くメリット・デメリットは?
    オーストラリアで働くメリットは、物凄く法律が強くて職場や生活の環境が良いことですね。例えば日本では労働基準法がありつつもブラック企業があったり、法律が物凄くなあなあだと思うんです。そんなこと言ってられないって企業もあるでしょうし。


    でもオーストラリアは法律が強いから、「そんなこと言ってられない」なんてことを言ってられない。オーストラリアではアルバイトの最低時給が16ドルなんですけれども、特にアジア系の企業などこの最低賃金よりも低い賃金で働かせる企業も結構あるんですよね。でもそれが捕まったらすぐにニュースになりますし、ローカルでもよく摘発されたりしますね。働いている人はすぐに相談できるし、すぐに監査も入ってくる。あとは休みも取らなきゃいけない。オーストラリアでは有給を取らないと逆にお店が回らなくなってしまう。その他にも年金も企業は別途払ってくれて、健康保険も国が払ってくれるなどどんな職業についていても将来をそこまで気にする必要が日本に比べて少ないんじゃないかなと思います。


    デメリットは日本と比べて物価が高いこととあまりおいしい食べ物がないことかなと思います。物価に関してはその分全員の最低時給は高いですが、食べ物に関しては個人的には日本のほうが美味しいかなと思います。都市によると思いますけど、オーストラリアで美味しい食材が手に入るのはシドニーとかメルボルンとかメジャーな二つの都市だけじゃないかな。僕の住んでいるブリスベンは市場すらないので魚屋から直接買う上に、出回っているのも刺身や寿司で出せるクオリティのものは本当に限られています。ツナ、サーモン、キングフィッシュ(ヒラマサ)くらい。いい食材が手に入る日本は素晴らしいですよね。
    ━━━海外での生活や仕事で苦労したことはありますか?
    一番苦労したのは語学です。


    TOEICも700か800くらい取っていてちょっと自信にもなっていたし、海外生活で英語を使って意思疎通もはかれていたので渡豪当初何とかやっていけると思っていました。でも、オーストラリア英語が何言っているか全然分からなくてかなり苦労しました。


    英語は分からないけどしょうがないとめげずに喋って、普段のコミュニケーションから学んでいきました。
    ━━━今後の目標を教えてください。
    自然農法という農業に興味があるので、将来はどこか都会を離れてほぼ自給自足のような形で生活していきたいと思っています。なので、もし自分でお店をやるとすれば添加物が入っているものは極力出していきたくない。理想は自分で野菜とかを作って、もしくは足りない分はローカルの農家から買うルートを作って、魚とか肉もローカルな漁師やファーマーの人たちから食材を得て…という感じに地域の中で貢献しながら自分の本当においしいと思えるもの、そしてオーストラリアの人たちが「ここは美味しい!」と思えるものを提供できるようなレストランを作りたいと思っています。


    ただそれをどのような形態で実現するか、どのように実現していくかというところはまだ模索中。今は一番興味のあること、出来ることをやっていっている段階です。
    ━━━海外で働くことに興味のある人にアドバイスがあれば宜しくお願いします!
    まずは一度海外に行ってみて、自分がどう感じるか確認してみることが一番だと思います。


    一週間でも半年でも、出来れば長いこと行ってみて「これはあってるな」とか「これは嫌だな」とか何か感じると思うんですけれども、すごく自分にしっくりくると思ったらそれはその場所が合っているということだと思うので。例えば、僕のバンドは結局最終的に5人の日本人のメンバーがアメリカに住むことになったけれど「アメリカ本当もう嫌だよね」とブツブツ言う人もいれば「あまり気にしない」ってメンバーもいたり、どっちつかずのメンバーもいたりで。それはもう人それぞれなんですよね。起こる物事も価値観によって捉え方も人によって違うので、その国・土地の風土が合っているかというのはその人の感覚でしかないですが、それが見定められたら…というか自然にモチベーションが湧いてくると思うんですよね。「もっとここに居たい」とか「また来たい」とか「住んでみたい」とか。だから少しでもそこに行ってみるのはいいと思います。
    ━━━インタビューへのご協力、ありがとうございました!
    20歳前後の時にバンド仲間と渡米するなど、かなり元から海外生活にオープンな方なのかと思いきや、渡米したばかりの時は「抵抗感でしかなかった」と語ってくださった有路さん。お寿司のカウンターがステージのようでエンターテイメント性を感じたというアーティスティックな有路さんはきっとブリスベンでもお寿司のエンターテイメント性でお客様を魅了しているのだろうなと想像しながらお話を伺いました。久しぶりに日本に戻ってきた中、インタビューにご協力してくださり有難うございました!
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